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本ページは、がん免疫製剤を処方されている方を対象に、適切な治療を受けていただくことを目的としています。

悪性黒色腫

Chapter 1

悪性黒色腫とは

はじめに

悪性黒色腫と診断されたあなたへ

悪性黒色腫は、皮膚の悪性腫瘍(皮膚がん)の一種です。このサイトでは、悪性黒色腫と診断された患者さんに、悪性黒色腫とはどのような病気か、どのような治療法があるか、診断から治療の流れなどについてご紹介しています。
病気と向き合い乗り越えていくためには、これから受ける治療やケアなどについてよく理解しておくことが大切です。
そして、医師や医療スタッフ、ご家族とともに、勇気を持って治療に取り組んでいきましょう。

    悪性黒色腫について

    悪性黒色腫とはどんな病気ですか?

    皮膚がんの一種で、皮膚の色素(メラニン)をつくる細胞やほくろの細胞ががん化したもので、メラノーマとも呼ばれます。

    悪性黒色腫は、足の裏や手のひら、爪、顔、胸、腹、背中など様々な部位にできます。また、眼球、鼻や口の中、肛門部などの粘膜にできることもあります。悪性黒色腫の原因はまだ明らかになっていませんが、紫外線や皮膚への摩擦、圧迫といった外からの刺激が関係していると考えられています。

    人体の構造と機能 第4版、p139, 医歯薬出版, 2015より改変

    その他の皮膚がん :
    基底細胞ががん化した「基底細胞がん」、有棘細胞ががん化した「有棘細胞がん」と呼ばれるものがあります。

    無(乏)色素性黒色腫 :
    ごくまれに、がん細胞がメラニンを産生せず、色素沈着を伴わない悪性黒色腫があります。

    日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019
    日本皮膚悪性腫瘍学会「市民のみなさまへ(悪性黒色腫)」

    悪性黒色腫の患者数はどれくらいですか?

    日本では、1年間で人口10万人あたり1~2人新規に発症するといわれています1)

    厚生労働省の調査によると、2017 年の日本における皮膚の悪性黒色腫の患者さんの数は約5,000人でした2)。悪性黒色腫患者の男女比は、男性患者が47%、女性患者が53%とほぼ同じです。50歳代から増加し、60歳代、70歳代に最も多く発症します。また、発症数は少ないものの20~30歳代にもみられます3)。悪性黒色腫の患者数は世界的に増加しており、日本でも増加しています4)

    1) 日本皮膚科学会ホームページ「皮膚科Q&A」
    2) 厚生労働省. 平成29年患者調査
    3) 悪性黒色腫全国統計調査:2005〜2013年度の集計結果. Skin Cancer. 29(2): 189-194, 2014
    4) メラノーマの予防とスクリーニング. Nippon Rinsho. 79(Suppl 2): 171-176, 2021

    悪性黒色腫の種類

    悪性黒色腫には、どんな種類がありますか?

    主に4つの種類(病型)があります。また、粘膜などに発生する病型もあります。

    悪性黒色腫は、見た目や顕微鏡で観察した組織の特徴などから大きく「末端黒子型(まったんこくしがた)黒色腫」「表在拡大型黒色腫」「結節型黒色腫」「悪性黒子型黒色腫」という4つの種類(病型)に分類されます。また、これら4病型の他に粘膜に発生する「粘膜部黒色腫」を分類することもあります。
    ただし、明確に分類できない場合もあります1)

    末端黒子型黒色腫1)

    足の裏、手のひら、手足の爪などの末端部に発生する黒色腫です。まず、形がはっきりせず、色調が単一でない褐色・黒褐色のシミができ、進行するとしこりや潰瘍(かいよう)ができます。爪に発生する場合は縦に黒い筋ができ、それが爪全体へ広がります。日本人に最も多い病型で、60歳代以降に多く発生します。

    表在拡大型黒色腫1,2)

    全身のあらゆる部位に発生します。境界が不鮮明で、少し盛り上がったシミとして現れ、色調は濃淡の混じったまだら状です。白人で最も多い病型ですが、日本人にも増えています。がんの成長は比較的ゆるやかです。また、BRAF遺伝子変異が多いことがわかっています(「薬物療法について」参照)。

    結節型黒色腫1)

    全身のあらゆる部位に発生します。黒色または濃淡の混じった結節(硬いしこり)ができますが、初期にはしこりの周囲にシミのような病変は生じません。40~50歳代に発生することが多く、がんの成長は速いのが特徴です。

    悪性黒子型黒色腫1)

    高齢者の顔面に多く発生します。境界がはっきりしないまだら状の平らなシミが現れ、長い年月をかけて大きく広がっていきます。日本人患者では最も少ない病型です。

    粘膜部黒色腫3-5)

    口腔、鼻腔、膣(ちつ)、外陰部、直腸、肛門などの粘膜に発生します。白人に比べると日本人での発生率は比較的高いといわれています。

    写真:爲政大幾先生 ご提供

    1) 国立がん研究センター がん情報サービス「悪性黒色腫(皮膚)」
    2) 信州医学雑誌, 55(1), p3-9, 2007
    3) 皮膚の悪性腫瘍, p30, 中山書店, 2014
    4) 日本皮膚悪性腫瘍学会「皮膚癌について」: 250-256, 2013
    5) 悪性黒色腫の組織学的分類, Nippon Rinsho. 71(Suppl)

    悪性黒色腫の特徴

    悪性黒色腫の早期発見のために、気をつけるポイントはありますか?

    通常のほくろやシミと見分けることが重要です。

    悪性黒色腫の早期発見のためには、下の表に示す5つの特徴(ABCDE基準)が役立つといわれています。ほかにも病変の大きさ、形、色に変化がないか、潰瘍や出血がないか、感覚に変化がないか、大きさ(最も長いところ)が6mmを超えていないかという点にも注意が必要です。

    Abbasi NR et al: JAMA 292: 2771-2776, 2004 より作成

    写真:爲政大幾先生 ご提供
    国立がん研究センター がん情報サービス「悪性黒色腫(皮膚)」