がんに対する免疫療法の歴史は1890年代にさかのぼり、外科医のColey氏が、がん患者に対して細菌を投与し、体の免疫反応を活発にすることでがんを小さくする方法を発見したことに始まります。1950年代から1970年代になると、細菌由来のBCGやキノコなどから取り出した成分でつくられた「非特異的免疫賦活薬」が開発されました。続いて1980年代には、体の免疫のはたらきを刺激する物質として「サイトカイン」を投与する治療法が始まりました。また、体に悪影響を与えないように弱くしたがん細胞を投与して、免疫力を高めるがんワクチン療法なども試みられてきました。
体に何らかの物質を投与して免疫力を高めるだけでなく、免疫細胞を体の外に取り出して増やしたり、がんに対する攻撃力を高めた後に体に戻したりするといった、LAK療法(サイトカイン刺激リンパ球を用いた治療法)などの「養子免疫療法」という治療法も開発されてきました。最近では、T細胞を使った治療法で効果が期待されているものもあります。さらに、免疫細胞のひとつであるB細胞が作り出している「抗体」という武器のようなものを人工的に合成する技術が発達したことから、1980年代から、がん細胞を攻撃したり、がんが増えるのを食い止めたりするはたらきをもつ抗体医薬品が開発されてきました。
近年の研究から、がんが免疫による攻撃にブレーキをかけていることがわかってきました。そこで、がんが免疫に対してかけているブレーキを解除する方法の一つとして、免疫チェックポイント阻害療法に注目が集まっています。
監修:慶應義塾大学 医学部
細胞情報研究部門 教授
河上 裕 先生