胃がんの治療法を選択する場合は、がんの発生場所(原発部位)、がん細胞の増殖の仕方(分化型、未分化型)と臨床病期に加え、患者さんの全身状態や治療の影響などを十分考慮し、個々の患者さんの状態に応じた治療方針が立てられます。
国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」
胃がんの治療の中心は、手術による胃の切除です。しかし、手術ができない場合や、転移があり、手術でがんが取りきれない可能性がある場合、全身治療である薬物療法が治療の中心となります。がんの進行ごとのおおまかな治療法を下図に示しました。患者さんによって異なることがありますので、詳しくは主治医に確認してください。
もっと知ってほしい胃がんのこと, p6-8, NPO法人キャンサーネッmジャパン, 2016
日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン, 医師用2021年7月改訂 第6版, 2021より作図
手術は、がんを確実に切除する方法が検討されます。がんの病期や位置に応じた標準的な術式にしたがい、胃の周囲のリンパ節を含めて切除する(リンパ節郭清術(かくせいじゅつ))のが一般的です。
「定型手術」とは、胃全体または胃の2/3 以上の切除に加えて、リンパ節をその周りの脂肪組織などと一括して取り除く手術をいいます。
「非定型手術」には、胃とリンパ節の切除範囲が定型手術より狭い「縮小手術」と、胃とリンパ節に加えて他の臓器を同時に切除する「拡大手術」があります。
胃がんがどこまで広がっているか、リンパ節転移があるかなどにより、どの手術が適しているかが検討されます。
胃がんの手術方法は、おなかを開いて切除する方法(開腹(かいふく)手術)と、おなかに小さな孔(あな)を数ヵ所開けてカメラや器具を挿入して切除する方法(腹腔鏡(ふくくうきょう)手術)や、手術支援ロボットを使用するロボット支援下手術がありますが、切除する範囲はいずれの方法でも変わりません。
内視鏡による切除は、口や鼻から入れた内視鏡を使って胃の内側から腫瘍を剥(は)ぎ取るように除去します。主な対象は、早期胃がんでリンパ節転移の可能性が極めて低く、腫瘍が一括切除できる部位と大きさ(最大径3cm以下)
の患者さんです※。
もっと知ってほしい胃がんのこと, p10-11, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2016
日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン, 医師用2021年7月改訂 第6版, 金原出版, p16-29, 2021
●リンパ節郭清術
目に見えないがんを取りこぼすリスクを減らすため、明らかな転移がみられない場合でも、胃の周囲のリンパ節を含めて広く切除する方法が用いられます。リンパ節の郭清範囲は、胃がんができた場所や胃がんの進み具合に応じて決められます。
日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン, 医師用2021年7月改訂 第6版, p17, 金原出版, 2021
消化器疾患ビジュアルブック第2版, p95-96, 学研メディカル秀潤社, 2014
インフォームドコンセントのための図説シリーズ 胃がん 改訂版, p80-84, 医薬ジャーナル社, 2012
ダンピング症候群
食べたものが腸へ一気に流れ込むことで生じます。食後すぐに現れる腹痛、動悸や発汗などの早期ダンピング症候群と、食後2〜3時間経ってから現れる、動悸、発汗、めまい、失神、脱力、手や指のふるえなどの後期ダンピング症候群があります。
ダンピング症候群を予防するには、ゆっくり食べる、1回の食事量を減らして1日の食事の回数を増やす(5〜6回)、よく噛んで食べる、食事中の水分摂取を減らすなど、食事の摂り方を工夫することが効果的です。
貧血
胃の切除から数ヵ月経つと、今までは胃から取り入れることができていた鉄が不足することによって、鉄欠乏性貧血が起こることがあります。また、4〜5年経ってからビタミンB12の欠乏により巨赤芽球(きょせきがきゅう)性貧血が起こることがあります。
これらは徐々に進行することが多いため、自覚症状が現れにくい傾向にあります。胃全摘した場合に生じやすく、食事に気をつけていても改善しない場合は、鉄剤やビタミンB12の投与による治療が考慮されます。
もっと知ってほしい胃がんのこと, p12-13, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2016
病気がみえる vol.1 消化器 第5版, p128-131, メディックメディア, 2016