食道に発生した悪性腫瘍を「食道がん」と言います。
この小冊子では、食道がんと診断された患者さんに、食道がんとは、どのような病気なのか、診断と治療の流れ、治療中のケアなどについてご紹介しています。
病気と向き合い、乗り越えていくためには、これから受ける治療やケアなどについてよく理解しておくことが大切です。このサイトを、主治医と治療の進め方などを話し合うときの参考資料としてぜひご活用ください。
そして、医師や医療スタッフ、ご家族とともに、治療に取り組んでいきましょう。
日本人の食道がんは、食道の中央付近にできることが多いのが特徴です。近年では、欧米に多い食道の下部にできるがんも増えてきています。食道がんは、食道の粘膜にある細胞が、さまざまな要因によって、がん化することで発生します。診断や治療技術の進歩により治療成績の向上はみられますが、いまだ早期発見が難しく、早期のうちに治療開始できることが少ないがんのひとつです。
食道がんは、進行するまで無症状のことが多く、飲み込みにくいなどの症状があらわれるのは、がんがある程度の大きさになってからです。
人によっては、早期に胸の違和感を覚えたり、熱いものがのどにしみる感じがするといった症状がみられることがあります。
国立がん研究センター がん情報サービス 「食道がん」
医療情報科学研究所 編:病気がみえる vol.1 消化器 第5版, p65,69, メディックメディア, 2016
細川正夫 監:食道がんのすべてがわかる本, p20-21, 講談社, 2015
国立がん研究センター がん情報サービス 「食道がん」
日本食道学会 編:食道癌取扱い規約 第11版, p6, 金原出版, 2015
一般的に、食道がんは、男性に多い傾向がみられます。年齢別でみると、50歳代から増加し、70歳代で最多となります。
食道がんのリスクを高める要因は、日常の生活習慣の中に潜んでいます。
とくに、日本人で多い扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん(「食道がんにはどんな種類がありますか?」の項参照)と言うタイプの食道がんは、飲酒と喫煙と強い関連があると言われています。
そのほかに運動不足や、熱いものや辛いものをよく食べる、野菜や果物をあまり食べない―といった食習慣なども、食道がんの発生に影響していると考えられています。
国立がん研究センター がん情報サービス 「食道がん」
野村基雄. 日本臨牀 2018; 76(増刊号8):45-48
食道がんは、主に扁平上皮がんと腺(せん)がんのふたつのタイプがあります。日本では、約90%が扁平上皮がんで、食道の粘膜を構成する扁平上皮から発生します。一方腺がんは、胃の内容物が逆流し、胃酸が食道を傷つける逆流性食道炎が背景にあることが多く、主に食道の下部に発生します。また、どこにがんが発生したかにより、頸部(けいぶ)食道がん、胸部食道がん、腹部食道がんの3つに分けられます。
国立がん研究センター がん情報サービス 「食道がん」
日本食道学会 編:食道癌取扱い規約 第11版, p6, 金原出版, 2015
細川正夫 監:食道がんのすべてがわかる本, p12, 講談社, 2015