制御性T細胞

免疫抑制細胞である制御性T細胞(Treg)は、自己に対する免疫応答を回避する「免疫寛容」に重要な役割を果たす一方で、がん細胞の「免疫逃避」にも関与し抗腫瘍免疫応答を抑制します。Tregはヒトでは主に胸腺からnaïve Tregとして末梢に出て、抗原刺激によりeffector Tregとなりますが、腫瘍局所では末梢血に比べてeffector Tregが多く、より活性化しています。Tregの免疫抑制機構として、TregのCTLA-4と抗原提示細胞(APC)のCD80/86の結合によるAPC成熟の抑制、TregによるIL-2消費、抑制性サイトカイン(TGF-β、IL-10など)および細胞傷害性物質(パーフォリン、グランザイムなど)産生による細胞傷害性T細胞(CTL)やCD4+ヘルパーT細胞の活性化抑制・破壊があげられます。なお、腫瘍へのTreg浸潤機構としては、腫瘍自体がTregを引き寄せてガードする「innate Treg infiltration」と、Tregの「炎症を抑制する」という役割から、CD8+T細胞等のエフェクター細胞が集積している腫瘍にTregが浸潤する「acquired Treg infiltration」に分類されます。

制御性T細胞 制御性T細胞

参考:榎田智弘、西川博嘉. 日本臨牀 2017; 75: 181-187

監修:国立がん研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野/先端医療開発センター 免疫TR分野 分野長
名古屋大学大学院 医学系研究科 分子細胞免疫学 教授
 西川 博嘉 氏